2021年4月2日金曜日

米国オレゴン州のエタノール製造プラントで爆発・火災

  今回は、2021316日(火)、米国のオレゴン州ワシントン郡コーネリアスにあるサンダーボルト・レーシング・フューエル社のエタノール製造プラントで爆発・火災があり、当初は貯蔵タンクが火災になったと報じられた事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国のオレゴン州(Oregon)ワシントン郡(Washington County)コーネリアス(Cornelius)にある食品関連会社サミット・フーズ社(Summit Foods)の複合施設のサンダーボルト・レーシング・フューエル社(Thunderbolt Racing Fuel)である。

■ 事故があったのは、複合施設の中で北4番街の500ブロックにあるサンダーボルト・レーシング・フューエル社のエタノール製造プラントである。施設には数千ガロン(20,000リットル)の高燃焼エタノールを保有している。


< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2021316日(火)午後130分頃、プラントで爆発があり、火災になった。目撃者によると、爆発があった後、そびえ立つような炎を見たという。

■ 発災に伴い、消防署の消防隊が出動した。当初は燃料タンクが火災になったという通報だった。

■ 消防隊は現場へ到着すると、エタノール・レーシング燃料を製造・保管されている一帯から大量の煙と炎が出ているのを認めた。消防ホースを展張し、消防活動を始めたが、1時間ほど過ぎて、爆発と不規則な火災状態のため、安全な距離をとるため一時的に配備位置を後方へ下げた。

■ 発災現場の向かい側に住む女性は、火災が始まったとき、車が家にぶつかったような音が聞こえたといい、「それから別な爆発が起こった後、消防隊がやってきて、皆の家のドアをノックし、すぐに避難しなさいといわれました。私は犬と一緒に家を離れました。とても怖かったです」と語っている。

■ 近くの住民約80戸に避難勧告が出された。消防署は避難勧告の範囲をインターネットで配信した。

■ 消防隊によると、燃焼しているのは高燃焼エタノールで、レーシングカー用だという。エタノールのレベルはかなり高く、ガソリンよりも高いので、かなり危険だという。

■ 火災はプラントだけでなく、建物や車両に広がった。

■ 発災による死傷者は出なかった。

■ 火災の状況についてメディアKGWからドローンによる空からの映像がユーチューブに配信されている。YouTube Watch: Sky 8 over large fire in Cornelius2021.3.16)を参照)

被 害

■ 製造プラント内の建物3棟と金属製ドラム缶が火災によって焼損した。

■ プラント内にあった車両と配達用トラックが数台延焼した。

■ 約80戸の住民が数時間避難した。



< 事故の原因 >

■ 事故の原因は、調査中である。しかし、火災調査官は、静電気が金属ドラム内で火災を引き起こし、急速に拡大したとみている。 

■ 当局者によると、サンダーボルト・レーシング・フューエルの従業員が、燃料をある金属製ドラム缶から別の金属製ドラム缶に移動させていたという。この過程で、従業員は激しい熱を感じ、ドラム缶の1つから火が出ているのを発見したという。

< 対 応 >

■ 消防隊は、ポートランド国際空港の泡搬送車を運び込み、明るい紫色の消火剤である“パー​​プルK” を噴霧し、午後7時頃、エタノール火災を鎮圧した。 

■ 午後7時過ぎに避難勧告は解除され、住民は自宅へ帰宅した。

■ 当局者によると、サンダーボルト・レーシング・フューエルの従業員が、燃料をある金属製ドラム缶から別の金属製ドラム缶に移動させていたという。この過程で、従業員は激しい熱を感じ、ドラム缶の1つから火が出ているのを発見した。従業員は消火器で炎を消そうとしたが、すでに火が大きくなりすぎていたという。火災調査官は、静電気が金属ドラム内で火災を引き起こし、急速に拡大したと考えている。


補 足

■「オレゴン州」(Oregon)は、米国の西部に位置し、太平洋に面した人口約383万人の州である。

「ワシントン郡」(Washington County)は、オレゴン州の北西部に位置し、人口約445,000人の郡で、農業、特に果樹の栽培が盛んである。

「コーネリアス」(Cornelius)は、ワシントン郡の中央部に位置し、人口約10,700人の市である。

■「サミット・フーズ社」(Summit Foods)は、1997年にオレゴン州コーネリアスに設立された食品関連会社である。リンゴを薄くスライスし、アップルチップのドライフルーツ製造を行っている会社である。

 10年前に最終的に埋立処分される食品加工製品や農業廃棄物をエタノール燃料に変換するプラントを建設した。これが複合施設である「サンダーボルト・レーシング・フューエル社」(Thunderbolt Racing Fuel)で、エタノール製造プラントを運営して地元のレーシング・チームに燃料を提供している。

■「パープルK」(Purple-K)は、米国の消火資機材メーカー;ケムガード社(Chemguard Inc.)が製造するドライケミカルの粉末消火剤である。火災の熱によって分解して不燃性ガスを発生し、噴射に用いた窒素ガスとともに空気中の酸素濃度を低下させて消火する。油火災のほか電気火災やガス火災にも有効で、消火後の清掃が容易で、火の及ばなかった機器を損傷することがないという特長を有している。パープルKの使用例は、つぎのブログを参照。

 ● 20154月、「米国ウィスコンシン州の製油所でアスファルト・タンク火災」

所 感

■ 初期の情報では、エタノール製造プラントから爆発があり、燃料タンクが火災になったというので、調べてみた。しかし、燃料タンクでなく、金属製のドラム缶から火が出たものとみられる。燃料の入ったドラム缶の取扱い方法に問題があったものと思われる。

■ 最終的に埋立処分される食品加工製品や農業廃棄物をエタノール燃料に変換するプラントを運営するという省資源を実践したことは称賛される。一方、エタノールやガソリンのような危険物質を取り扱うための安全について抜けが出たのだろう。10年間問題がなかったことから油断があったのかもしれない。

■ 一方、デジタル化が進んでいる米国と感じる事故情報である。わずか1万人ほどの市だが、ドローンによる映像が地元メディアからユーチューブで流され、避難勧告の地域範囲が消防署からインターネットで流されている。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

      Oregonlive.com, Fire, explosions at Cornelius ethanol facility prompt evacuation, March 16, 2021

      Usnews.com, Fire at Ethanol Plant West of Portland Prompts Evacuations, March 16, 2021

      Ktvz.com, Fire at ethanol plant west of Portland prompts evacuations, March 16, 2021

      Koin.com, Explosive ethanol fire guts business, vehicles in Cornelius, March 16, 2021

      Statesmanjournal.com, Fire at ethanol plant west of Portland prompts evacuations, March 16, 2021

      Industrialfireworld.com, Fire at Oregon Ethanol Plant Prompts Evacuations, March 17, 2021

      Kgw.com, Fire at Cornelius ethanol fuel facility likely started by static, March 17, 2021  


後 記: 今回の事故情報で感じたことは、早ければ良いというものでないことです。事故当日に多くのメディアが報じています。消防隊や近隣の住民の声を聴いたり、事故の緊迫感はあります。しかし、事故原因に関する情報はほとんでありません。翌日になって報じたメディアの中から、火元はエタノール製造プラントや貯蔵タンクではなく、金属製ドラム缶であることが分かりました。最近の報道ではめずらしく、初期の一過性の情報でないように努める姿勢を感じました。新型コロナウイルスの影響で通信社の出すような一報の情報だけで済ます記事が多かったのですが、米国は少し落ち着いて来たのかも知れません。



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