2020年10月20日火曜日

兵庫県加古川市で解体中のタンクが爆発、死傷者2名

 今回は、2020年10月1日(木)、兵庫県加古川市にある繊維会社のオーミケンシ社の加古川工場で、現在は使用していなかった二硫化炭素の入ったタンクを解体中、爆発し、死傷者2名が出た事故を紹介します。
< 発災施設の概要 > 
■ 事故があったのは、兵庫県加古川市尾上町池田にある繊維会社のオーミケンシ社の加古川工場である。 

■ 発災があったのは、加古川工場内にある現在は使用していなかったタンクである。このタンクは二硫化炭素が入っていたもので、二硫化炭素はレーヨンを作る際の原料として使っていた。

 
< 事故の状況および影響 > 
事故の発生 
■ 2020年10月1日(木)午前11時30分頃、加古川工場のタンクが爆発を起こした。 

■ 加古川工場の工場関係者から、「タンクが爆発して火災になっている」と消防署へ通報があった。

■ この事故に伴い、工場従業員の男性ふたりが被災した。爆発によって、ひとりの男性が背中にやけどを負うなどして倒れており、その後死亡した。音を聞いて現場に駆け付けた別の男性は、喉に痛みを訴えて搬送されたが、軽傷である。 

■ 死亡した被害者は、当時、工場2階でタンクを電動のこぎりで解体し、配管を切断する作業中だった。タンクや配管には引火性の二硫化炭素が残っていたとみられるが、約10年間使われておらず、入っていない前提で作業していたという。工場では更地にするための解体作業をしていた。 

■ 現場は、山陽電鉄尾上の松駅から南に約600mで、付近に住宅街がある。 

被 害 
■ 工事中の従業員が爆発のため死亡した。 

■ 旧レーヨン製造装置のタンクや配管が爆発して損壊した。 

< 事故の原因 > 
■ 事故の原因は、タンクや配管に引火性の二硫化炭素が残っており、電動のこぎりの火花で着火し、爆発したものとみられる。 

■ タンクや配管は約10年間使われておらず、内部に可燃性液体などが入っていないという前提で作業していた。 

< 対 応 > 
■ オーミ ケンシ社は、10月2日(金)、従業員死亡事故について発生状況と関係者へのお詫びをウェブサイトに掲載した。警察および労働基準監督署によって原因調査されており、全面的に協力しながら原因究明に取り組んでいく旨を表明した。 
補 足 
■「兵庫県」は、近畿地方の西方に位置し、人口約546万人の県である。県庁所在地および最大の都市は神戸市(人口約152万人)である。  
「加古川市」は、兵庫県の南部にあり、人口約261,000人の市である。 
■「オーミケンシ㈱」は、彦根市の近江絹綿(おおみけんし)として1917年に創業した会社である。主要業務はレーヨン綿・糸など繊維であり、加古川に1965年に工場を新設した。しかし、2020年5月、取締役会で事業再構築策を決議し、レーヨン綿・糸の生産や関連事業の不採算部門を撤退することを決定した。この決定にもとづき、全従業員を対象として勇退勧奨(退職日は2020 年10月末日)が行われている。一方、継続する事業分野は不動産賃貸事業、環境問題に対応する研究開発、ホームファニシング・化粧品事業、食品事業、ソフトウェア開発である。
 
■「二硫化炭素」は、化学式CS2で、無色、揮発性の液体で、密度1.26g/c㎥、蒸気密度(空気を1として)2.62、引火点‐30℃で非常に燃えやすい。人への中毒性がある。比重が重いので、液表面を水で覆うと安全である。主にセロハンやレーヨンの製造工程の溶剤として利用されている。 

■「レーヨンの製造方法」は、木材パルプを原料として、パルプの中の天然セルロースをアルカリ(苛性ソーダ)処理した後、二硫化炭素と反応させてセルロース誘導体をつくる。これをアルカリ溶液に溶解させて原液(ビスコース)とし、この原液を細い孔の多数ある口金から酸性浴中に押し出し、繊維を形成させながら化学反応させて、セルロースを再生する。 
■「発災タンク」の大きさなどの仕様は分かっていない。 

所 感 
■ このところ、取り上げている事故情報は、つぎのように「一人作業」による人身災害が続いている。  
今回の事故も一人作業によるもので、被災者が亡くなっているので、詳しい事故状況は分からないだろう。 

■ 今回の事故の間接要因でまず誰もが気づくのは、つぎのような事項だろう。  
 ● タンクと配管の解体作業を従業員がなぜ一人で行っていたのだろうか。  
 ● 解体に際して、なぜガス検知を行わなかったのだろうか。  
 ● 作業を行う前の危険予知はやっていたのだろうか。  
 しかし、 事業所のことを調べていたら、2020年5月に取締役会で事業再構築策を決議し、レーヨン綿・糸の生産や関連事業の不採算部門を撤退することを決定し、この決定にもとづき、全従業員を対象として勇退勧奨(退職日は2020年10月末日)が行われていることを知った。被災者がどのような立場にいたのか分からないけれども、自覚と責任をもった行動をとらなければならないと安易に言えない事例である。
 

備 考  
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。 
・Nikkei.com, タンク爆発か、男性死亡 兵庫のオーミケンシ工場, October, 01, 2020 
・Tokyo-np.co.jp, 兵庫でタンク爆発か、男性死亡 繊維会社の工場、1人軽傷, October, 01, 2020 
・N-seikei.jp, オーミケンシ加古川工場でタンク爆発火災一人死亡 なんと二硫化炭素タンク解体中, October, 02, 2020 
・Kobe-np.co.jp, 兵庫でタンク爆発か、男性死亡 繊維会社の工場、1人軽傷, October, 01, 2020 
・Fp-ins-info.com, 兵庫県加古川市の「オーミケンシ」でタンク解体作業中に爆発事故, October, 01, 2020 
・Omikenshi.co.jp, 弊社従業員死亡事故について, October, 02, 2020 


後 記: 発災事業所が事業再構築策を決断したのは5月で、新型コロナウイリスの影響がどの程度あったか分かりませんが、世の中は倒産やリストラするところが増え、変わってきているのは確かです。Go To ○○に代表される政策やニュースで、「昨年と比べて…」、「元のように回復…」という言葉が使われていますが、これは上がるにしても、下がるにしても、リニア(線形)で物事を考えているといえるでしょう。新型コロナウイリスは戦争にたとえられますが、太平洋戦争が終わった8月15日を境にして人々の生活や価値観はリニアではなく、すべてがガラッと変わりました。リニア(線形性)の変化でなく、ある日を境にしてノンリニア(非線形性)の変化です。現在、人は意識しているか、意識していないかに関わらず、物事はノンリニア(非線形)で変化していくでしょう。過去の事例をひもとき、今後に活かそうというブログで、こんなことを書く世の中になるとは。

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