2020年8月8日土曜日

米国ルイジアナ州の原油生産施設でタンクに落雷して火災

 今回は、2020年4月29日(水)、米国ルイジアナ州アカディア教区にあるジェニングス・ホールディングス社の原油生産施設のタンクが落雷によって火災となった事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、ルイジアナ州(Louisiana)アカディア教区 Acadia Parish)にある原油・天然ガスの生産に携わっているジェニングス・ホールディングス社(Jennings Holdings)の原油生産施設である。

■ 発災があったのは、ミッドランド(Midland)とマーメンタウ(Mermentau)の間のオールド・スパニッシュ・トレイル通りとヴェルディン通りの近くにある油井ルブラン1号の原油生産施設(タンク・バッテリー)のタンク設備である。施設内には、油タンクが2基、塩水タンクが2基があった。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020年4月29日(水)午前8時頃、原油生産施設のタンクに落雷があり、火災となった。


■ タンク火災の通報は国土安全保障・緊急事態対策局のアカディア教区事務所(Acadia Parish Office of Homeland Security and Emergency Preparedness)にあり、通報を受けて15分以内に緊急対応部隊と第5地区の消防隊が現場に出動した。


■ 雷は油タンクに直撃または近くに落ち、油タンク2基に引火したものとみられる。油タンクは爆発し、噴き飛んだものと思われる。塩水タンク2基は現場に残っていた。4基のタンクはすべてFRP製だった。


■ 原油生産施設は“シャットイン”(閉止)の状態だった。すなわち、製品はすべて施設から取り去り、残留液のみが残っていた。火災になった2基のタンクには、以前、塩水が入れられていた。


■ 緊急対応部隊が現場に到着したとき、油タンク2基は噴き飛んでいたが、状況は制圧下に置くことができた。 

■ タンク火災は、午前9時45分頃に消火された。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。


被 害

■ 火災によってFRP製のタンク4基が損壊した。


■ 負傷者はなく、人的被害は無かった。 


< 事故の原因 >

■ タンク爆発・火災の原因は落雷によるものだとみられる。

< 対 応 >

■ 現場に出動した国土安全保障・緊急事態対策局のアカディア教区事務所の緊急対応部隊と第5地区の消防隊のほか、アカディア教区保安官事務所、ルイジアナ州警察のハズマット・チーム(Hazmat Team) 、ルイジアナ州環境局、ルイジアナ州天然資源局が出動した。


■ 火災は許可された原油生産施設内の限定され、環境への影響は最小限にとどまったとみられた。


■ 4月29日(水)午前11時頃には、事故修復期間の第一段階に入っていた。担当機関はルイジアナ州環境局とルイジアナ州天然資源局で、現場のクリーンアップ(浄化)作業を始めていた。

補 足

■ 「ルイジアナ州」(Louisiana)は、米国南部に位置し、メキシコ湾の面した人口約466万人の州である。州の土地の多くはミシシッピ川を流下する堆積物から形成している。

「アカディア教区」 (Acadia Parish)は、ルイジアナ州の南にあり、人口約62,000人の教区(郡)である。

■ 「ジェニングス・ホールディングス社」(Jennings Holdings)は、2005年に設立され、ルイジアナ州を拠点にした原油・天然ガスの生産会社で、従業員は2名である。油井ルブラン1号(LEBLANC 001)は、2018年には実際に原油を産出する生産井になっていたが、今回の報道では生産していないシャットイン(Shut in;閉止)の油井になっている。同社の油井リストを見ると、シャットイン(閉止)の油井は結構多い。将来再生産することを考慮したものか、撤去費用を節約しているのかは分からない。


■「発災タンク」は、FRP製というだけで、大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べてみると、ミッドランドとマーメンタウの間のオールド・スパニッシュ・トレイル通りから南へ約1,400mほど行ったところに4基のタンクと少し離れたところに1基のタンクがある。おそらく、この4基が落雷で火災になったタンク群と思われる。4基のタンクはすべて同径で、直径は約3.8mである。高さを5.0mと仮定すれば、容量は約56KLとなる。従って、直径約3.8m×容量50KL級のタンクが4基配置されていたとみられる。


所 感

■ 今回の事故は落雷によるものである。ルイジアナ州はテキサス州と並んで雷の多い州で、この時期は落雷による事故は少なくない。今回分かったことは、石油生産施設(タンクバッテリー)では、原油を産出する生産井の施設だけでなく、シャットイン(Shut in;閉止)の油井の施設があるということである。タンクは水(塩水)に置換することになっているようだが、今回の事例を見れば分かるように、実際には生産を止めただけで、タンク内には油が入っていたと思われる。


■ 緊急対応部隊や消防隊が現場に出動しているが、目立った消火活動は行っていない。おそらく、不介入戦略として燃え尽きる戦略をとったものと思われる。ルイジアナ州環境局とルイジアナ州天然資源局がクリーンアップ(浄化)作業の担当であり、泡消火水を多量に放射することはまわりの農地に環境汚染になり、この影響を与えることを避けたのだろう。米国ルイジアナ州の原油生産と消火活動の施策方針なのだと思う。このあたりは油田の無い(正確には極めて少ない)日本には理解できないところである。



備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   ・Klfy.com,  Lightning strike causes tank battery explosion in Acadia Parish,  April  29,  2020

    ・Katc.com,  Acadia Sheriff: Fire out, no injuries after lightning hits oil tank,  April  29,  2020  

    ・Crowleytoday.com, LIGHTNING STRIKE IGNITES TANK BATTERY,  April  29,  2020

    ・Crowleytoday.com, CLEANUP UNDERWAY AT TANK FIRE SITE,  May  01,  2020



後 記: 今回の事故は、ほかの情報を調べていて分かったものです。ルイジアナ州はテキサス州と並んで雷の多い州の割には、日本ではタンク火災事故の情報を捕まえきれません。今回事故のあったアカディア教区は人口約62,000人の教区(郡)ですし、広大な農地の中にポツンとある原油生産施設なので、人びとの関心は薄くなるのでしょう。しかし、事故に間接的なことですが、石油生産施設(タンクバッテリー)はひとつずつ名前が付けられ、中にはシャットイン(Shut in;閉止)の油井の施設があるということは初めて知りました。今後、原油生産施設(タンク・バッテリー)のタンク火災があったときに見方が変わり、役立ちます。




 






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