2020年7月27日月曜日

米国カンザス州の原油生産施設のタンクが落雷で爆発・火災

 今回は、2020年6月19日(金)、米国のカンザス州プラット郡ソーヤーの南にあるFGホール社の油井の原油生産施設内の油タンクが落雷によって爆発・火災を起こした事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国のカンザス州(Kansas)プラット郡(Pratt)ソーヤー(Sawyer)の南にあるFGホール社(F.G.Holl)の油井の原油生産施設である。


■ 発災したのは、プラット郡を通る幹線道路のU.S.281号線とSE110号線の交差点近くの原油生産施設内にあった油タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020年6月19日(金)午前6時頃、 原油生産施設の油タンクが爆発し、火災が起こった。


■ 発災に伴い、消防隊が出動した。消防隊が到着したときには、施設から炎と煙が立ち上っていた。


■ 施設の油タンク2基が爆発して東側に噴き飛び、施設外へ数フィート飛んで落下した。しかし、U.S.281号線を越えることはなかった。


■ 油井との供給ラインは午前9時頃に正常に閉止された。


■ 消防隊は、午前10時頃に消火活動を開始した。午前10時30分頃までには、火災は消防隊によって制圧された。


■ 油タンク2基とヒーター・トリーター(heater-treater unit)1基が火災で損壊した。


■ 当時、この地域には激しい雷雨が通過しており、火災の原因は落雷による可能性が高い。


■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

被 害

■ 原油生産施設内の油タンク2基とヒーター・トリーター設備1が損壊した。


■ 事故に伴う負傷者の発生はない。


■ 幹線道路の交通制限は無かった。


< 事故の原因 >

■ 事故の原因は落雷とみられる。


< 対 応 >

■ プラット郡緊急事態対応部署が事故対応で出動した。


補 足

■「カンザス州」(Kansas)は、米国の中央部に位置し、人口約290万人の州である。

 「プラット郡」(Pratt)は、カンザス州の南部に位置し、人口は約9,300人の郡である。この郡の最大都市で郡庁所在地はプラットである。

 「ソーヤー」(Sawyer)は、プラット郡の南に位置し、人口約120人の町である。

■ 発災した原油生産施設の「FGホール社」(F.G.Holl)は、1980年に設立し、米国カンザス州ウィチタに本拠地を置く原油・天然ガスの探査・生産を行う石油会社で、従業員は21名である。


■「発災タンク」は、U.S.281号線とSE110号線の交差点近くの原油生産施設内にある油タンクというだけで、あとの詳細仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、発災場所には、6基のタンクがあり、大きく分けると、東西3基づつに分かれる。発災があったのは、東側にあったタンク群である。発災タンクの大きさは、グーグルマップによると、タンクの直径が約3.8mなので、高さを約5mとすれば、容量約56KLとなる。 直径約3.8mの容量50KL級のタンク2基が爆発で飛んだとみられる。

■ 被災したのは油タンク2基とヒーター・トリーター(Heater-treater unit)であるが、これは陸上油井の原油生産施設として典型的な構成で、図に示す。通常、セパレーター(ノックアウト槽)、ヒーター・トリーター、貯蔵タンク、循環ポンプ、水の貯蔵または処分するための設備で構成される。生産井と原油生産施設を接続する配管はフローラインと呼ばれる。油井から出てくる油、ガス、水はエマルジョンとして遊離水ノックアウト槽に入る。 この時点で、ガスと水の一部はエマルジョンから分離する。残りのエマルジョンはヒーター・トリーターに入り、そこで加熱され、エマルジョンは油、ガス、水に分離される。水はドレンラインから排出され、塩水処理設備に移送される。ガスは計量装置を経てガスラインに送られる。原油はタンクへ入り、そこからドレンバルブを通じてタンクローリーに積み込まれるか、パイプラインに接続される。不純物を含む原油はポンプを使ってヒーター・トリーターに戻してタンクに再循環させる。

所 感

■ 今回の事故は落雷によるタンク火災である。しかも、原油生産施設内の油タンク2基とヒーター・トリーター設備1基が損壊したというので、かなり強烈な落雷で延焼したものと思われる。


■ 消火戦略は防御的戦略をとったのではないだろうか。午前6時頃に発災し、郡の消防隊が到着するには結構な時間がかかったと思う。消防隊が到着したときには、施設から炎と煙が立ち上っていたという。おそらく、屋根部が近くに飛んだ油タンク2基は火災になり、ヒーター・トリーターも火災を起こしており、手につかない状況だったと思う。原油生産施設の西側にあるタンク3基への延焼防止を最優先にした防御的戦略だと思う。発災から3時間半ほど経った午前10時頃に保有資機材で消火のめどが立ったと判断し、約30分で制圧したものだと考える。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

      ・Ksn.com, Crews battle tank battery fire in Pratt County,  June  19,  2020

      ・Leavenworthtimes.com,  Explosion at tank-battery site near Sawyer causes early Friday excitement,  June  19,  2020

      ・Newsbreak.com, Crews battle tank battery fire in Pratt County,  June  21,  2020

      ・Pratttribune.com, Explosion at tank-battery site near Sawyer causes early Friday excitement,  June  19,  2020

      ・Kcbd.com, Lightning strikes tank battery early Tuesday, Post Volunteer Fire Dept. responds,  June  23,  2020



後 記: 今回の事故報道は詳しくはありませんが、発災写真を含めて複数のメディア情報をよく読み、調べてみると、見えてくるものがありました。油井の原油生産施設(タンク・バッテリー)の構成について分かりました。広大な開拓地の中にポツンと危険物施設が立っているのですから、雷から見れば、落ちてくださいと言っているようなものです。「NASAによる世界の雷マップ」によると、カンザス州は落雷の多い地域ですが、これまでこのブログで取り上げたタンク火災はありません。タンク火災が無いとは考えられないので、ローカルニュースとして情報をキャッチできなかったと思っています。

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