2017年6月25日日曜日

アイルランドの飼料製造工場で貯蔵タンク火災

 今回は、2017年6月18日(日)、アイルランドのリムリック市にあるロシュ・フィーズ社の家畜用飼料製造工場で貯蔵タンクが火災になった事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、アイルランド(Ireland)のリムリック市(Limerick)にあるロシュ・フィーズ社(Roches Feeds)の家畜用飼料製造工場である。ロシュ・フィーズ社は、国内最大の家畜用飼料製造会社のひとつである。

■ 発災があったのは、リムリック市ドック通り沿いにある製造工場内の貯蔵タンクである。
 リムリック市にあるロシュ・フィーズ社の飼料製造工場付近 (矢印部に複数の貯蔵タンク)
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年6月18日(日)真夜中の午前0時30分頃、製造工場内にある貯蔵タンクの1基から火災が発生した。

■ リムリック消防署は火災発生の通報を受け、現場へ出動した。

■ 消防隊による約5時間の消火活動によって火災は消火された。消防関係者によると、「貯蔵タンクから火が出ていました。幸いにも、飼料製造工場本体と離れていましたが、延焼する可能性は十分ありました。消防隊は火災の消火に5時間かかりました」と語っている。

■ アイルランドの警察であるガルディ(Gardai)は、火災がテロなどの不審火ではなく、偶発的な事故だとみている。 

被 害
■ 貯蔵タンク1基が焼損したほか、内部の液体が焼失した。被災の状況と程度は不詳である。

< 事故の原因 >
■ 火災の原因は不明である。火災はテロなどの不審火ではなく、偶発的な事故だとみられている。 

< 対 応 >
■ リムリック市消防署から消防車両2ユニットとはしご車が出動したほか、隣接するシャノン町の消防署から消防車両1ユニットが支援で出動した。消火活動の結果、鎮火の安全宣言が6月18日(日)午前5時に出された。   
            リムリック市消防署の消防車両の例   (写真はFire-ireland.comから引用)
補 足
■ 「アイルランド」(Ireland)は、正式にはアイルランド共和国で、北大西洋のアイルランド島にある立憲共和制国家である。人口は約460万人で、首都はダブリンである。
 「リムリック市」(Limerick)は、アイルランド中西部の「リムリック州」の州都で、人口約94,000人の都市である。都市の南には、豊かな牧草地のゴールデンベールがあり、この都市の産業の多くは農業に関連している。
 
 歴史的にみると、アイルランドはイギリスが最初に支配した植民地である。大地主による小作農を使役した商品作物栽培を行う植民地農業政策で工業化は遅れた。また、宗教では、プロテスタントによるカトリック教徒への迫害があった。1800年代初めには、市場において高く売買される農作物がイングランドに大量に移送される一方で、アイルランドからは食物が枯渇し、不作に見舞われた小作農の大量餓死が発生した。この飢餓や貧困から逃れるために、生き残った多くのアイルランド人は米国へ移住した。このため、1840年に800万人を数えた人口が1911年に440万人にまで減少した。これ以降、現在に至っても総人口は回復していない。
 1919~1922年にアイルランド独立戦争によって自由国として独立した。しかし、イギリス連邦下であることに不満をもつ人によってアイルランド内戦が起きた。このようにアイルランドではイギリス(イングランド)への植民地支配の恨みが強く、反英感情が残っている。
 一方、米国への移住者の子孫の中から、ジョン・F・ケネディやロナルド・レーガンという米国大統領になった人が出たことから米国との関係は良い。 
アイルランド(Ireland)とリムリック市(Limerick)の位置
(写真はGoogleMapから引用)
■ 「ロシュ・フィーズ社」(Roches Feeds)は、国内最大の家畜用飼料製造会社のひとつで、7,000の顧客に飼料を供給している。ロシュ・フィーズ社のオーナーはロシュ家で、現在は4代目が引き継いで経営している。リムリック市には、300万ユーロ(3億6,000万円)を投じた家畜飼料製造工場を保有している。

■ 「発災タンク」は、製造工場から離れたところにあるので、グーグルマップによって調べてみると、工場の裏にタンクらしい設備が複数確認できる。高い基礎の上に設置されたタンクと、防液堤らしいものに囲まれたタンクがある。前者は直径約5mで100KLクラス、後者は直径1.7mで10KLクラスだとみられる。発災タンクがどちらか特定できないが、火災を起こすような可燃性物質だということを考慮すれば、防液堤に囲まれて小さい方の10KLクラスのタンクと思われる。報道では、貯蔵タンクというだけで内液の種類について言及されていないので、特定できないが、工場で使用されるとすれば、軽油などの燃料ではないだろうか。なお、タンクと工場本体の距離は40mほど離れている。
飼料製造工場の発災場所とみられる付近 (矢印部:貯蔵タンク)
(写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ 工場の貯蔵タンクにおける火災ではあるが、貯蔵タンクの内液の種類は勿論、大きさなど仕様が分からない。真夜中の火災ということもあってか、投稿の写真などもない。消防活動についても、小型タンクの割に5時間も掛かったという印象だが、よく分からない。報道での伝え方は一般的な家屋火災と変わらないという印象である。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Limerickleader.ie,  Fire at Storage Tank in Limerick Manufacturing Plant ‘not suspicious’,  June 18,  2017  
    ・Irishexaminer.com,  Firefighters Battle for 5 hours to Put out Blaze in Limerick City,  June 18,  2017    
  ・Topix.com,  Firefighters Battle for 5 hours to Put out Blaze in Limerick City,  June 18,  2017


後 記: 火災情報の内容からブログの対象にするか迷いましたが、これまでアイルランドの火災事故を紹介したことはなく、調べてみました。今回調べて感じたのは、細かいことにこだわらず、悠々とした国ではないかということです。偶発的な事故とみているようですので、タンク火災といっても消防署では深く原因を追及しないのではないでしょうか。アイルランドの警察は、通常、ガルディ(正式には「アイルランド治安防衛団」)と言われているのは、初めて知りましたし、第一公用語が英語でなく、アイルランド語というのも初めて知りました。それで、今回の事故情報をアイルランド語で検索してみましたが、ヒットすることはなく、本当にローカルなニュースの扱いなのだと感じました。

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