2016年10月22日土曜日

インドネシアの製油所でアスファルト・タンクが爆発・火災

 今回は、2016年10月5日(水)、インドネシアの中央ジャワのチラチャップにあるプルタミナ社の製油所でアスファルト・タンクが爆発し、火災となった事故を紹介します。
(写真はNews.detik.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、インドネシアの中央ジャワのチラチャップ(Cilacap)にあるプルタミナ社(PT Pertamina)の製油所である。

■ プルタミナ社は国有石油企業でインドネシア国内に6つの製油所(合計約104万バレル/日)を所有し、チラチャップの製油所は「プルタミナ・リファイナリー・ユニットⅣチラチャップ」(Pertamina Refinery Unit Ⅳ Cilacap)と呼ばれている。チラチャップ製油所は精製能力388,000バレル/日である。発災があったのは、容量1,500KLのアスファルト・タンク(No.41 T-312)で、1998年に建設されたものである。
チラチャップ市  (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2016年10月5日(水)午後12時半頃、製油所のアスファルト・タンクが爆発し、火災となった。

■ タンクから上がる黒煙は製油所から3~5km離れたところでも見えるほどだった。爆発音を聞いたプルタミナの近くに住む人によると、爆発後に黒煙が空高く立ち昇るのを見て、住民はしばらくパニックになったという。しかし、その後、黒煙の色が薄くなり、落ち着いたという。また、構内にいてちょうど休み時間に爆発音を聞いたという作業員によると、爆発とともに振動を感じたいう。

■ アスファルト・タンクはメンテナンスのために内部の油抜き・清掃工事期間中だった。タンク内のアスファルトのレベルは30cm程度だったとみられる。発災タンクは製油所の中央にある比較的小さいタンクである。

■ 事故に伴う死傷者は報告されていない。
 
■ 火災は消火泡が放射され、午後2時頃に消すことができた。
 火災は延焼することなく、製油所の操業に影響を及ぼすことはなかった。

被 害
■ アスファルト・タンク1基が爆発・火災で損壊した。被災の程度や状況は不詳である。

■ 発災に伴う負傷者は無かった。

< 事故の原因 >
■ 原因は分かっておらず、調査中である。

< 対 応 >
■ プルタミナ社は、事故による製油所の操業に影響はないと発表した。 

補足
■ 「インドネシア」(Indonesia)は、正式にはインドネシア共和国で、東南アジア南部に位置する共和制国家で、人口約2億4,700万人の国である。首都はジャワ島にあるジャカルタである。
 「チラチャップ」(Cilacap)は、ジャワ島の中央ジャワにあり、人口約68,000人の都市である。
ンドネシア  (写真はRin1214.blogspot.jpから引用)
■ 「プルタミナ社」(PT Pertamina)は、1957年に設立され、インドネシア政府が株式を所有する国有の石油・天然ガス会社である。国内に6箇所の製油所を持ち、5,000箇所以上のガソリンスタンドを有している。
 チラチャップには、「プルタミナ・リファイナリー・ユニットⅣチラチャップ」(Pertamina Refinery Unit Ⅳ Cilacap)と呼ばれる精製能力388,000バレル/日のチラチャップ製油所がある。製油所内における発災タンクの場所をグーグルマップで調べたが、情報が乏しく、確認することができなかった。
プルタミナ社のチラチャップ製油所  (写真はBeritadaerah.co.id から引用)
■ 発災タンクは容量1,500KLのアスファルト・タンクであるので、内部加熱器付きのコーンルーフ式タンクとみられる。メディアが伝える直径×高さの情報は、8m×16mおよび6m×16.5mの二つがあるが、容量は500~800KL程度となり、 1,500KLと合わない。(1,500KLであれば、直径11m×高さ16mクラスになる)
 また、タンク内に残っていたアスファルトの量は、メディアによって3cm、35cm、66.7cmとかなり違っている。 判断できる情報はないが、本文では、中間の30cm程度とした。

■ アスファルトタンクの事故は毎年起こっており、最近の事例はつぎのとおりである。
 ② 2006年5月、「日本の東亜石油京浜製油所におけるアスファルトタンクの爆発事故」
 ③ 2009年9月、「ニュージーランドのフルトンホーガン社のアスファルトタンク爆発による溶接士の死亡事故」
 ④ 2010年12月、「カナダのポートスタンレーにあるマックアスファルト・インダストリー社のアスファルトタンク破損による漏洩事故」

所 感
■ アスファルトタンクにおいて注意すべきことはつぎのとおりである
   ① 水による突沸
   ② 軽質油留分の混入
   ③ 運転温度の上げ過ぎ
   ④ 屋根部裏面の硫化鉄の生成
 今回の事故は複雑な要因によるものでなく、アスファルトタンクで注意すべき基本事項について危険予知が不足していたことで起ったものと思われる。タンクはメンテナンスのため、タンク内液を抜き、内部の清掃準備にあった際に発生したとみられる。従って、事故の要因としては、アスファルトの流動性をよくするため軽質油を混合し、内部加熱器で加温して温度を上げ過ぎ、タンク内に可燃性混合気が形成して、静電気などの着火源で爆発したことが考えられる。 


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Af.Reuters.com,  Pertamina Says Fire Extinguished at Cilacap Refinery,  October 05,  2016 
  ・En.sindonews.com,  Cilacap Pertamina Refinery Explodes,  October 05,  2016
  ・Mrcplast.com, Fire Extinguished at Cilacap Refinery of Pertamina,  October 06,  2016  
  ・Kebumenekspres.com ,  Kilang Minyak Pertamina Cilacap Terbakar,  October 05,  2016
    ・Bisnis.liputan6.com, PertaminaApi Sudah PadamTak Ada Korb Akibat Tangki Terbakar, October 05, 2016 
    ・Gtra.com, Pertamina Jelaskan Kronologi Kebakaran Kilang Cilacap,  October 05,  2016



 後 記: 最近、ブログに取り上げている事故をみると、中東など初めての国が多いですね。いわゆる開発途上国のインフラ(ここでは貯蔵タンクが対象)が整備されてきたので、事故が起こるようになったのでしょうか。もうひとつ感じるのは、事故を伝えるメディアが増えてきたことです。以前はローカルな話として海外に伝わることはなかったのが、今はインターネットで地球の裏側にすぐ情報が流れる時代になったからでしょうね。今回のインドネシアも初めての紹介です。ただ、プルタミナのチラチャップ製油所では、2011年にタンク火災事故が起こっています。当時はブログを始めたばかりで、事故情報をキャッチするアンテナが狭かったですね。

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