2015年5月12日火曜日

米国テキサス州カーンズ郡の石油生産関連施設で落雷によるタンク火災

 今回は、2015年4月17日、米国テキサス州カーンズ郡にあるシェール・タンク・トラック社の石油・天然ガス処理施設のタンク設備に落雷があり、爆発が起こって火災となった事故を紹介します。
(写真はFoxsanantonio.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 発災施設は、米国テキサス州カーンズ郡にある石油関連企業のシェール・タンク・トラック社(Shale Tank Truck)の石油・天然ガス処理施設である。施設は、カーンズ郡カーンズ・シティ市街地から北へ3マイル(4.8km)先のハイウェイ181号線沿いにある。

■ 石油・天然ガス処理施設には、油井の処理作業から出る油と塩水の混合液の入っているタンク設備がある 。
                         発災場所    (写真はFoxsanantonio.com から引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
(写真はKsat.com から引用)
■ 2015年4月17日(金)午後4時10分頃、シェール・タンク・トラック社のタンク設備に落雷があり、爆発が起こって火災となった。

■ 激しい風雨と落雷がこの地区を襲った10分後に爆発・火災が起った。カーンズ郡のドゥエイン・ビリャヌエバ保安官によれば、この地区を雷を伴った嵐が通過していった時刻に、シェール・タンク・トラック社の施設で爆発が発生したといい、午後4時10分過ぎからカーンズ郡保安官事務所には、爆発音が聞こえたという通報が数多く寄せられた。

■ 火災発生に伴い、カーンズ・シティなどの消防隊が出動した。現場では、激しい炎が空に舞い上がり、大きな黒煙が立ち昇り、遠くからも確認できた。炎は100フィート(30m)を超える高さに達した。油混じりの塩水タンクは完全に炎に包まれてしまっていたので、消防隊は燃え尽きさせる方法をとったと、ビリャヌエバ保安官は語った。

■ 火災で被災したタンクは12基であった。

■ ビリャヌエバ保安官は、住民の遠くへの避難やシェルター内への退避は必要なかったと語っている。ハイウェイ181号線は数時間にわたって閉鎖された。

被 害
■ 事故に伴う負傷者は無かった。施設の作業員は安全に構内から退避していた。 

■ 施設内の被災したタンクは12基だった。各タンクには、400~650ガロン(1,500~2,450リットル)の液がほぼ一杯に入っていたと当局の発表を報じたメディアがあった。(注:データの信ぴょう性には疑問あり)

< 事故の原因 >
■ 油と塩水の混合液の入ったタンク内の可燃性ガスが、落雷によって引火したものとみられる。

< 対 応 >
■ 火災発生に伴い、カーンズ・シティ消防署のほか、ケネディ消防署とフォール・シティ消防署が出動した。

■ 消防隊は火災を拡大させないことを優先した。火炎の状態が激しく、既存の消防資機材では消火することができないと判断し、夜通し燃えさせ、燃え尽きさせる方法をとった。結局、4時間の火災で被災したタンクは12基であった。

■ テキサス州環境保全委員会とテキサス州鉄道委員会が、情報を収集するため、担当官を派遣した。

■ 発災に伴い、ハイウェイ181号線が閉鎖されたが、午後7時30分に閉鎖は解除された。

■ 当局によると、この種の出来事はよくあることとし、会社としては対応の準備をしていたと語っている。しかし、 4月17日金曜の夜の時点で、シェール・タンク・トラック社からの声明は出ていない。

補 足
■ 「テキサス州」は米国南部にあり、メキシコと国境を接している州で、人口は約2,510万人と全米第2位である。
 「カーンズ郡」はテキサス州の中央部南に位置する郡で、人口は約14,800人であり、郡庁所在地が「カーンズ・シティ」(人口約3,000人)である。
 カーンズ・シティでは、事故のあった施設の近くで、2014年5月に今回と同種の落雷によるタンク火災があった。(当ブログ「米国テキサス州カーンズ郡で落雷によるタンク爆発・火災」を参照)

(写真は同社ウェブサイトから引用)
■ 「シェール・タンク・トラック社」(Shale Tank Truck Co.)は、2002年に設立され、石油・天然ガスの生産に関わる流体輸送業務を行なう会社である。主にテキサス州を中心に石油・天然ガス生産における排水の輸送と処理を行っており、各地に12箇所の処理施設を有し、220台の輸送用トラックと1,250基のフラクチャリング流体用タンクを保有している。
 事故のあったカーンズ・シティの施設は排水処理施設のひとつである。「会社としては対応の準備をしていた」という表現があるが、この種の施設にはめずらしい貯水池を有していることを指しているものと思われる。
カーンズ・シティにあるシェール・タンク・トラック社の施設
(写真はグーグルマップから引用)
■ 「発災タンク」の仕様は明らかにされていないが、グーグルマップによると、タンク直径は約3mであり、高さを56mと仮定すれば、40KL級の容量だとみられる。全容量は12基合計で約480KLとなる。油分の割合を510%とおけば、2448KLの油が燃焼したことになる。タンク材質はグラスファイバー製と思われ、最初の落雷タンクが爆発して火災となり、隣接タンクへ延焼していくときには、タンクが熱で損壊し、プール火災になったものと思われる。
                 カーンズ・シティのタンク施設   (写真はグーグルマップから引用)
所 感
■ 前回、「米国コロラド州で天然ガス生産関連施設に落雷してタンク火災」を紹介したが、同じ日の午後に、テキサス州の同種施設で同じように落雷によるタンク火災が起こっている。油混じりの排水(塩水)の処理施設というが、石油・天然ガス生産で出てきた排水の中に含まれる油留分は揮発性が高く、可燃性混合気を形成し、容易に引火しやすく、落雷による爆発・火災の危険性は極めて高いと思われる。今後も、この種の施設における落雷によるタンク火災の起こる頻度は多いだろう。
 
■ 石油・天然ガス関連の塩水処理施設の事業者は、リスクが高いことを承知しているとみられるが、消防機関も、この種の施設では基本的に「燃え尽きさせる戦略」をとる考え方だとみられる。かなり激しい火炎状態であるが、タンク周辺が広く、タンク(およびタンクローリー車)以外に延焼する恐れはないので、燃え尽きさせる戦略が最も有効だと判断しているのだと思う。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・ExpressNews.com, No Injuries in Karnes County Lightning Strike, Explosion,  April 17, 2015  
    ・Ksat.com, Oil Facility Erupts into Flames near Karnes City,  April 17, 2015
    ・Mysanantonio.com,  Large Explosion at Karnes City Oil Facility Sends Flames More than 100 Feet into The Air,  April 17, 2015   
    ・Mysoutex.com, Severe Weather Sparks Explosion, Crashes,  April 17, 2015   
    ・Foxsanantonio.com,  Lightning Blamed for Explosion at Oil Disposal Company,  April 18, 2015
    ・Kens5.com,  Lightning to Blame for Explosive Fire in Karnes Co.,  April 18, 2015
    ・Firehouse.com,  Lightning Strike at Texas Oil Facility Sparks Large Explosion,  April 18, 2015



 後 記: 米国の落雷シーズンの始まりです。水圧破砕法による石油・天然ガス生産施設が増えているので、この種の落雷によるタンク火災は頻繁に起こると思います。しかし、米国(テキサス州)では、このようなタンク火災は、落雷による山火事と同様に自然災害のような接し方だと感じます。山火事では延焼を防ぐことが基本ですので、この種のタンク火災は燃え尽きさせるのが適切(というより最適)という考え方でしょう。
 日本では、苫小牧などに天然ガス生産井がありますが、水圧破砕法ではありません。しかし、最近、秋田の方で水圧破砕によるシェールオイルの採掘試験が始まったようですので、今回紹介したようなタンク火災と燃え尽きさせる消防活動が日本で起こりうる日が来るかもわかりませんね。


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