2014年12月24日水曜日

米国ニューヨーク州で暖房油用タンクの爆発・火災事故

 今回は、2014年12月15日、米国ルイス郡ライオンズ・デールにあるリエナージ・ホールディング社のリエナージ・ライオンズデール工場で、暖房油用のタンクが爆発して火災を起こした事故を紹介します。
 (写真はWKTV.comから引用
 <事故の状況> 
■  2014年12月15日(月)午前3時頃、米国ニューヨーク州にある燃料油タンクが爆発する事故があった。事故があったのは、ニューヨーク州ルイス郡ライオンズ・デールにあるリエナージ・ホールディング社(ReEnergy Holdings LLC)のリエナージ・ライオンズデール工場(ReEnergy Lyonsdale)で、暖房油用のタンクが爆発して火災を起こした。
ニューヨーク州ルイス郡ライオンズ・デール付近
(写真はグーグルマップから引用)
■ 消防当局によると、リエナージ・ライオンズデール工場・発電プラントの屋外にある暖房油(ヒーティング・オイル)用のタンクが午前3時少し前に爆発したという。タンクには約2,200ガロン(8,300リットル)の油が入っていた。

■ 発災に伴い、ライオンズ・フォール消防署とポート・ライデン消防署が出動し、ルイス郡消防署からコーディネーターが支援に駆け付けた。ルイス郡消防署のコーディネーターであるロバート・マッケンジー氏によると、ボランティア型消防署の消防士は、午前2時55分に木材チップ燃焼コージェネレーション・プラントへ緊急出動し、燃えていたタンクに対して泡と水による消火活動を行なったという。

■ マッケンジー氏は、「封じ込めの対象はタンクだけで、ほかの構築物は影響を受けていませんでした。施設管理者の報告によると、爆発音を聞いて火災の通報をし、それから発災がタンクで、コージェネレーション・プラント本体エリア内ではないということでした。タンク内の油は外に漏れていませんでした。すべてはタンクまわりの防油堤内に限定されていました。消防士が現場で消火活動にあたったのは約2時間です」と語った。
 
■ リエナージ・ホールディング社広報担当部長のサラ・ボッジスさんの発表によると、火災が起こったとき、施設は動いていなかったという。というのも、火災が起こるより以前に、ブレーカーが落ちるという故障があって施設を停止していたとのことである。燃料油タンクは駐車場のエリアに設置されていた。この事故に伴い、従業員や請負会社の人にケガ人はおらず、また被害は大きくないという。

■ 同社の15日月曜午後の発表によると、ブレーカの交換とテストが終わった後、施設は月曜夕方に運転を再開する予定だったという。このような状態であるため、施設は送電会社のナショナル・グリッド社と連携をとって管理していくことになるだろうと述べている。タンク内には暖房油が残っている。環境対応チームによってタンク内の油と水と泡を回収しているという。州の環境担当部門に連絡をとり、月曜日に現場を評価してもらっている。

■ 発災タンクは容量が10,000ガロン(37,800リットル)であるが、事故時にはタンク内に2,200ガロン(8,300リットル)の暖房油が入っていた。同社の発表では、暖房油を使うため、一時的にポータブルのタンクを使用する予定だという。

■ 同社の安全衛生部門は事故原因と発火源が何だったのか調査を始めた。ブルース・プロヴェン工場長は、「健康と安全がわたしどもの最優先事項です。このたびの消防署による迅速なご支援に感謝致します。目撃した人の話を聞き、設備の検査を行い、徹底的な事故原因の調査を実施していきます。もし、改善の必要な事項が出れば、調整してまいります」と述べている。

補 足
■ 「ニューヨーク州」は、米国の北東部地域に位置し、大西洋岸中部にある州で、人口約1,930万人である。州都はオールバニ(人口約93,000人)で、最大都市はニューヨーク市(人口約810万人)である。
 「ルイス郡」は、ニューヨーク州の中央部北に位置し、人口は約27,000人の郡である。群庁所在地はラウビル村(人口約3,400人)である。
 「ライオンズ・デール」は、ルイス郡の中央部に位置し、人口約1,200人の町である。
■ 「リエナージ・ホールディング社」(ReEnergy Holdings LLC)は、森林の木質バイオマスや廃木材を使用して再生エネルギーを生産する企業で、リバーストーン·ホールディング社(Riverstone Holdings LLC)の投資先企業として 2008年に設立された。リエナージ・ホールディング社は、6つの州で9つの再生エネルギー工場を有し、325,000kWの発電プラントを有している。従業員は約330名である。
 「リエナージ・ライオンズデール工場」(ReEnergy Lyonsdale)は、ライオンズデール町に46エーカー(186千㎡)の用地を有し、木質バイオマスを原料とした発電能力22,000kWのプラントを操業している。同工場は1992年に設立され、2011年にリエナージ・ホールディング社の傘下に入った。現在は21,000世帯に電力を供給している。なお、グーグルマップでは発災タンクを識別できなかった。
 「ナショナル・グリッド社」(National Grid PLC)は、英国に本社を置く電気・ガス公益事業会社で、主な事業展開エリアは英国と米国北東部である。米国北東部では送電事業と天然ガス移送事業を行っている。
                ニューヨーク州ライオンズ・デールにある工場付近   (写真はグーグルマップから引用)
                  リエナージ・ライオンズデール工場   (写真は同社ウェブサイトから引用)
所 感 
■ 事故は発電プラントに付帯する燃料油タンクではなく、建物の空調などに使用する暖房油タンクだと思われる。プラントが運転されているときには、プラントで発生する蒸気や電気で暖房などの用役をまかなうことができるが、プラントが停止した場合にのみ暖房油タンクの油を使用するものと思われる。暖房油(ヒーティング・オイル)は日本の灯油に相当する。

■ 発電プラントが停止(ブレーカの不調)し、容量37KLタンクの油を使用していた際、夜中の午前3時前に爆発・火災が起こっている。灯油は安全性が比較的高く、暖房用に使用されるが、ジェット機やロケットの燃料として用いられるように爆発混合気を形成する危険性物質であり、例えば、つぎのような危険要因が潜在する。
 ● 灯油の引火点は40~60℃であり、タンク内でこの温度以上に加熱されると、爆発混合気を形成する可能性がある。(この場合、タンクに予熱用コイルが設置されているという前提) 
 ● 灯油の中にガソリンなど揮発性の高い油を間違って混入させると、タンク上部に爆発混合気を形成する可能性がある。タンク受入時に油種を間違ったり、少しくらいならいいだろうという安易な考えで混入させてしまう可能性はある。
 ● 灯油は静電気を発生しやすい油種のひとつであり、タンク受入時の流速が速いと静電気が蓄積する。通常、初期流速は1m/s以下に制限され、このことは石油産業では常識であるが、 2003年に起こったオクラホマ州グレンプールのタンク火災(ディーゼル燃料)では、移送操作の際、オペレーターが流速を速くしすぎたために生じた静電気によって着火し、爆発・火災となった事例がある。 (「米国オクラホマ州グレンプール火災(2003年)の消火活動」「貯蔵タンクの火災要因と防止策」を参照)

■ 灯油は一般に爆発を起こしにくい油種として知られている。しかし、現実には爆発・火災事故が起こっている。おそらく、発災以前にタンクに関わる作業や操作にミスがあったものと思われる。

備 考
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・Sfgafe.com,  Fuel Tank Explodes in Upstate NY; No Injuries, December 15,  2014
   ・WKTV.com,  Fire Crews Respond to Lyonsdale Fuel Tank Explosion, December 15,  2014 
   ・NewsDay.com, Fuel Tank Explodes in Upstate NY; No Injuries, December 15,  2014   
   ・WaterTownDailyTimes.com, ReEnergy Lyonsdale Has Fire in Kerosene Tank, December 16,  2014
   ・TheMoose.net, Fire at Reenergy Lyonsdale,  December 16,  2014



後 記: 人口1,200人の町で、午前3時頃に発災して2時間後(午前5時頃)には鎮火した事故なので、事故情報は限られていました。なぜ、灯油相当の油タンクで爆発が起きたのだろうという疑問がありましたが、今回の情報で感じたのは、事故そのものでなく、米国の懐の深さです。原油産出国であり、最近はシェールオイルの資源開発が盛んな国ですが、ニューヨーク州の田舎(ことばが悪いですが)では、民間企業による木質バイオマスによる発電が行われていて、別な民間企業による送電が行われているということを知りました。21,000世帯に電力を供給しているということですので、人口約27,000人のルイス郡すべてを軽くカバーしていることになります。まさにエネルギーの地産地消です。これに投資ファンドが投資先企業として発電プラントに投資をしています。これが「民間の活力」ということなのでしょうね。

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