2014年7月26日土曜日

米国コロラド州で洪水によって今年もタンクから油流出

 今回は、昨年起こった米国コロラド州で洪水によって被災したタンクから油流出」に続いて、今年2014年6月20日にコロラド州で起こった洪水によるタンクからの油流出事故の情報を紹介します。
洪水によって油流出のあったノーブル・エナージー社の原油タンク施設 
 (写真Denver.CBSlocal.comから引用
 <事故の状況> 
■ 2014年6月20日(金)、コロラド州ウェルド郡(Weld County)にある石油貯蔵タンクが洪水によって被災し、キャッシュラ・プードル川へ原油が流出する事故が起こった。事故があったのは、ウェルド郡とラリマー郡のホームルール自治体であるウィンザーの町の郊外にあるノーブル・エナージー社(Noble Energy Inc.)の所有するタンクで、流出した量は7,500ガロン(28KL)とみられる。
コロラド州ウェルド郡のキャッシュラ・プードル川付近 
 (写真はグーグルマップから引用)
■ コロラド州天然資源部によれば、ノーブル・エナージー社の所有するタンク施設に洪水が襲い、防油堤内に流れ込み、バルブを壊してタンク内の油が漏洩した。油は約1/4マイル(400m)下流の植生域に流れて集まった。当局は、漏洩は止まっていると発表した。清掃部隊が川岸に付着した油の除去作業をバキューム車や吸着剤を使用して開始した。当局によると、地域の飲料水への影響はないという。今のところ、流出域における生態系への悪影響が現れるかどうかは不明である。しかし、流出したタンクまわりのエリアにある植物の中には変色しているものがある。

■ ノーブル・エナージー社は6月20日(金)の午後に油流出を発見し、その後その旨をコロラド州石油・天然ガス資源保全委員会および関係機関に報告した。漏れた量はタンク内の全量で、約178バレル(28KL)だという。タンク近くにある油井は閉止された。隣接する別なタンクは損傷しなかったが、安全かどうかは確認できていない。ノーブル・エナージー社は予防措置として、損傷タンク隣りの被災しなかったタンクから油の抜取り作業を行なった。

■ コロラド州天然資源部広報担当のトッド・ハートマン氏は、6月21日(土)もノーブル・エナージー社の清掃部隊と環境保護機関当局者がキャッシュラ・プードル川の現場で清掃作業を行っていると語った。さらに影響を受けた土壌を除去する準備を始めたという。

■ ノーブル・エナージー社は6月21日(土)、同社社員はクリーンアップを適切に行うため環境サービス会社の協力を得て作業中であり、潜在的な環境への悪影響を軽減するため、関係機関と密接に連携して進めるという声明を出した。

■ 流出のあった油井とタンク施設は、コロラド州の水系に極めて近い場所にある何千という個所のひとつであるが、これまで環境保護団体はコロラド州の湖や河川を保護するため州の規制を見直すよう働きかけていたにもかかわらず、事故が起こった。

■ コロラド州では、洪水によって油の流出する事故が続いている。昨年秋、歴史的な洪水によってコロラド州は大きな痛手を負ったが、この時は原油・天然ガス施設のタンクが被災し、少なくとも10箇所から油流出があった。2つのタンク施設から約5,225ガロン(20KL)の油がサウス・プラット川へ流出し、プラットヴィル近くでは多くのタンクから約13,500ガロン(51KL)の油が流出している。国内で最も掘削密集地域のひとつに洪水が押し寄せ、10月には、流出の全貌がはっきりしないが、公式発表の数字では43,000ガロン(162KL)の油が流出し、18,000ガロン(68KL)以上の破砕用水が流出している。米国内に豪雨によって洪水を起こさせるような異常気象は、原油・天然ガス施設の関係者にとって新たな脅威になっている。

 コロラド州の油流出のニュースは環境保護団体エンビロンメント・アメリカ(環境アメリカ)が出したレポートも話題になった。レポートでは、2012年の一年間でコロラド川に放出された毒性ケミカルが849,610ポンド385トン)にのぼるというものである。硝酸カリ汚染は農業事業から出る典型的な環境汚染で、最も一般的な形態で放出され、コロラド水系に藻類ブルームが異常繁殖して死の水域に至らせる。

■ エンビロンメント・アメリカの上席法定代理人のジョン・ランプラー氏は、「私たちが川の中の酸素を全部吸い取ったら、魚がいなくなり、私たちの川は生物のいない川になってしまいます。 この有毒物質の汚染は、私たちがクリーン・ウォータ・アクト(Clean Water Act)活動を推進して強力な保護を行なう必要性を知らしめているのです」と語っている。
   (写真Denver.CBSlocal.comから引用)                        (写真はUSAtoday.comから引用)   
補 足                                                        
■ コロラド州は、米国西部に位置し、州の南北にロッキー山脈があり、州全体の平均標高が全米で一番高い山岳地帯の州である。州の西部はコロラド高原、東部はグレートブレーンズ(大平原)である。人口は約500万人で、州都および最大都市はデンバーである。コロラド州は石油・天然ガス資源に恵まれており、米国天然ガス田100傑のうち7か所、油田100傑のうち2か所がある。天然ガスの生産量は国内生産量の5%を超えている。オイルシェールの埋蔵量は石油換算で1兆バーレル とされているほか、石炭(瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭)もかなりの埋蔵量が見つかっている。
 「ウェルド郡」 (Weld County)は、コロラド州北東部に位置し、比較的平坦な地域にあり、人口約25万人である。ウェルド郡はコロラド州の中でも牛・穀物・テンサイの生産量が多く、ロッキー山脈の東側では最も裕福な農業郡でもある。ウェルド郡では、2013年に洪水があり、石油タンク施設から油流出の事故があった。「ラリマー郡」はウェルド郡の西に隣接する郡である。
 「ウィンザー」は、ウェルド郡とラリマー郡のホームルール自治体で、人口は約18,600人の町である。ホームルール自治体は米国における地方自治のひとつの形態で、ホームルールとは地方自治体が州政府など外部から加えられる統制を最小限にとどめ、自らの問題を自ら解決していくことのできる権限である。
 
■ 「ノーブル・エナージー社」(Noble Energy,Inc.)は、1932年に設立された米国の石油・天然ガス探査・生産で、テキサス州ヒューストンに本拠を置く。特に、1990年代から飛躍し、現在ではフォーチュン1,000社にランクされる企業となっている。メキシコ湾を中心に事業を展開し、米国内陸地の探査・生産も行っているが、コロラド州の事業はマイナーの位置付けである。同社ウェブサイトでは、今回の事故情報はニュースリリースの対象としてなっていない。
コロラド州ウェルド郡のキャッシュラ・プードル川付近のタンク施設 
 ×印がタンク施設の場所。今回の流出の該当施設は見当たらず、おそらく新しい施設とみられる
(写真はグーグルマップから引用)
                キャッシュラ・プードル川付近のタンク施設の例     (写真はグーグルマップから引用

所 感
■  昨年の油流出事故の所感では、「米国コロラド州で記録的な豪雨(100年に1度)によるタンクから油流出する事故で、世界的に見ると、異常気象による集中豪雨や洪水が、異常な出来事ではないように思える」と述べた。2年続けて洪水が起こり、まさにいつでも起こる災害になった感がある。

■ 州政府や地方自治体、あるいは石油会社は、おそらく昨年のような事態は起きないだろうという予断があったと思う。この地区の1箇所当たりの原油タンク施設は小規模で、タンクの防油堤は土盛り式で高さも低く、洪水の水圧や流れで簡単に壊れるに違いない。河川近くにある原油タンク施設は洪水が起こりうるという前提条件で配管や防油堤を設計する考え方に変える必要があるのは確かである。

<備 考>  
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・USAtoday.com, 7,500 Gallons of Oil Spills in Colorado River,  June 20, 2014 
   ・Fox21news.com, Crews Cleaning up after Colorado Oil Spill, June 21, 2014 
   ・EcoWatch.com,  Noble Energy Spills 7,500 Gallons Crude Oil into Colorado’s Poudre River, June 21, 2014
   ・Denver.CBSlocal.com,  Oil Spill Cleanup Underway in Windsor, June 21, 2014
   ・ThinkProgress.org,  Damaged Storage Tank Spills 7,500 Gallons of Oil into River in Colorado, June 23, 2014



後 記: 自然災害を理由に事故を大目に見る時代ではありませんね。今回のコロラド州の油流出事故を見ても、昨年より厳しい見方になっています。地方政府や石油会社の対応に問題ありますが、政治的な批判記事のところは少し控えました。
 ところで、夏休みに入り、甲子園を目指す高校野球地方大会が始まり、自宅のすぐ近くにある周南市野球場(津田恒美メモリアムスタジアム)でも、球音と声援がセミの鳴き声といっしょに聞こえてきます。あまちゃんのテーマ曲も応援歌で登場しています。グランドでは、本当に一生懸命に野球をやっています。コールドゲームになりそうでも、ひたむきにプレーしているのはいいですね。しかし、この高校野球も多くの人の支援の中で行われています。試合前のほか、5回が終わった段階で、写真のようにたくさんの人が荒らたグランドを整備しています。高校野球は夏の風物詩のひとつですね。



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