2013年9月3日火曜日

豪州エクソン・モービルの旧製油所でタンク火災

 今回は、2013年8月16日、豪州南オーストラリア州ロンズデールのポート・スタンバックにあるエクソンモービル社の旧アデレード製油所において撤去工事中に起きたタンク火災事故を紹介します。
旧アデレード製油所においてタンク撤去中に火災事故  
(写真はau.news.yahoo.comから引用)
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・ABC.net.au, Fuel Fire in Old Refinery Tank,  August 16,  2013
      ・Adelaidenow.co.au, Redundant Fuel Tank Catches Fire at Disused Mobil Oil Refinery at Lonsdale, August 16,  2013
  ・au.news.yahoo.com,  Fire Crews Tackle Fuel Tank Blaze,  August 16,  2013    
  ・ExxonMobil.com, Small Fire at Former Adelaide Refinery, August 16,  2013 

  <事故の状況> 
■  2013年8月16日(金)午前11時、豪州南オーストラリア州にある旧製油所のタンクから火災の起きる事故があった。事故があったのは、南オーストラリア州ロンズデールのポート・スタンバックにあるエクソンモービル社の旧アデレード製油所で、すでに使用されていないタンクだった。

■ 火災は取り壊されていたタンクから午前11時ちょうどに起こった。タンクに残っていた油が燃え出し、周辺は煙に包まれた。消防隊が出動し、20名を越す消防士によって火災は制圧されたが、一時、火炎が高く立ち上り、視界をさえぎるほどだったので、消火活動に当たった消防車はお互いに注意しあった。消防隊はタンクに泡を放射し、冷えるのを待ったのち、鎮火宣言を行なった。現場にあった他のタンクに延焼することはなかった。火災の煙は住民へ危険を及ぼすことはなかった。メトロポリタン消防署によると、エクソン・モービル社の消防隊が再燃した場合に備えて監視しているという。

■ 閉鎖された製油所は、2012年から撤去工事が始められており、タンクは取り壊しが行われている最中だった。

 <エクソンモービル・オーストラリアの声明>
    =旧アデレード製油所で小火(ぼや)= (2013年8月16日 同社ウェブサイト) 
■  本日午前11時頃、旧アデレード製油所構内において貯蔵タンクの撤去工事中、小規模な火災がありました。

■ 構内の自衛消防隊がただちに火災の制圧作業に入るとともに、速やかに消防機関などへ通報しました。MFS(メトロポリタン消防署)がすぐに現場へ駆けつけました。安全を確保した現場指揮所において、全員が協力して対応に努めました。煙がかなり昇りましたが、火災はそれほど大きな規模ではありませんでした。私どもはMFSの消防隊と一緒になって活動し、火災をタンク内に封じ込め、できる限り早く消火するように努めました。

■ 2012年から始めた旧アデレード製油所の設備解体作業の一環として、タンクの撤去工事中に火災が起こったものです。

■ モービル社は、従業員、地域社会および環境の安全確保に努めてきました。私どもは、事故の未然防止を目標に事業の経営を実施してきました。一方、万が一の事故に備えて迅速に対応できる仕組みを構築し、私どもの操業や作業段階で生じた事故に対して影響を最小限にするように努めてきました。
 私どもは今回の事故原因を調査していきます。隣接されている方々にご心配をおかけしたことをお詫び致します。地域社会への健康や安全のリスクはまったくありませんでした。
モービル社・旧アデレード製油所の壊れた石油タンク  
(写真および解説はAdelaidenow.com.auから引用)
旧アデレード製油所の取り壊されているタンク  
(写真はau.news.yahoo.comから引用)

補 足                  
■ 「豪州」(オーストラリア)は、南半球オセアニアに位置する連邦立憲君主制国家で、イギリス連邦王国の一国でもあり、人口は約2,100万人である。漢字による当て字は濠太剌利と表記され、濠洲(ごうしゅう)とも呼ばれたことから、常用漢字の「豪」を代用して現在では豪州と書かれる。
南オーストラリア州 
 「南オーストラリア州」は、豪州の中央南部に位置し、人口約150万人の州である。州都は最大都市であるアデレードである。アデレードの人口は約112万人であり、南オーストラリア州の大半がアデレートに集中している。
 「ロンズデール」は、南オーストラリア州アデレートの南に位置する工業地区である。製油所や自動車工場が進出したが、2003年頃からエクソンモービルのアデレート製油所や三菱自動車(旧クライスラー)のエンジン工場の撤退が続いた。
 
■  「エクソンモービル社」(ExxonMobile Corp)は米国テキサス州に本拠地をもつ総合エネルギー会社で、スーパーメジャーの一つである。世界200ヵ国以上で展開し、21ヵ国に37の製油所を持ち、生産能力540万バレル/日、販売量640万バレル/日の巨大企業である。1999年、エクソン社とモービル社の合併で生まれた会社であるが、元々二社ともロックフェラーが1870年に設立したスタンダードオイルの流れをくむ企業である。  

 豪州におけるエクソンモービル社が「エクソンモービル・オーストラリア」(ExxonMobile Australia)である。豪州内では一般にモービル社と呼ばれている。豪州には、アルトナとアデレードの2箇所に製油所を所有していた。 「アデレード製油所」は1963年から操業を開始し、年間330百万トン(約70,000バレル/日相当)の精製能力を有していたが、2003年に操業を停止した。製油所の敷地は239ヘクタールあり、施設は2019年までに撤去し、整地される予定である。 
                   操業時のアデレード製油所全景   (写真はtopviewstudio.comから引用

 アルトナ製油所では、2010年2月8日、容量8,000KLのガソリンタンクから無鉛ガソリンが漏洩する事故が起こっている。事故発生後、約14台の消防車と70名を越える消防士ら緊急対応人員が出動し、着火しないように漏れた油を泡で覆う活動を行った結果、火災発生は避けられた。
2010年アルトナ製油所におけるガソリンタンク漏洩事故で出動した緊急対応部隊  
(写真はHeraldSunのウェブサイトから引用)

所 感
■ 今回の火災タンクは、コーンルーフ型で保温が無いので、軽油または軽質重油(A重油など)用のタンクだったと思われる。通常、使用停止したタンクは別タンクへ油を抜き出し、軽質油および水で洗浄して危険性が排除される。このようなタンクのクリーンアップを順番にやっていくと、最後に残ったタンクの油抜き出しや洗浄は単独で行い、処理しなければならない。推測であるが、最後のタンクとしてクリーンアップが十分でなく、底部に残ったスラッジ中の油分が火災の原因の一つとして考えられる。
 なお、浮き屋根式タンクの場合、シール部材があり、撤去工事中の火気で燃える危険性があり、注意が必要である。

■ 豪州では、石油メジャーの製油所撤退が続いている。同様に日本の石油業界の状況も悪い。製油所の生産プラントが閉鎖されても、一般にタンク施設は石油ターミナルとしての機能が維持されることが多い。しかし、タンクの中には撤去されるものも出る。今回の事例は撤去タンクの安全確保という問題であり、今後の日本でも出てくる課題だと思う。




後 記: 今回の事故情報で感じたのは、エクソンモービル社が言うように「小火(Small Fire)」で、被害がほとんどなくても、遠い南半球のことが日本にも伝わるということです。
 「最悪シナリオを真先に考えるアメリカ、 最悪シナリオをない事にする日本」といわれますが、エクソンモービル社は声明の中で最悪シナリオに関する考え方をきちんと伝えています。一方、日本では東京電力福島第1原発の汚染水漏れの問題について国会審議をオリンピック開催国決定の日を避けて9月中旬以降に先延ばしにしたと報じられています。この姑息な措置に批判が出て、さすがに政府も汚染水問題の対応方針を急遽出すことにしたようですね。

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