2013年9月21日土曜日

米国ニューハンプシャー州の地下タンクでフラッシュ・ファイヤー、2名負傷

 今回は、2013年9月9日、米国ニューハンプシャー州マンチェスター市のハノーバー通りにあるモービル給油所の地下タンクでフラッシュ・ファイヤーが起き、工事中の作業員2名が火傷を負うという事故を紹介します。
事故のあったニューハンプシャー州マンチェスターのモービル給油所 
 (写真は1.WHDH.comから引用)
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・1.WHDH.com, 2 Workers Injured in Gas Tank Explosion in NH,  September 09, 2013
      ・Boston.CBSlocal.com, Explosion at Machester, NH Gas Station,  September 09, 2013 
  ・NECN.com,  2 Men Injured in Manchester, NH Flash Fire,  September 09, 2013
      ・WMUR.com,  Workers Seriously Injured in Fire in Diesel Tank,  September 10, 2013
      ・Firehouse.com,  Flash Fire Severely Burns Two N.H. Tank Technicians,  September 11, 2013      

 <事故の状況> 
■  2013年9月9日(月)午後1時頃、米国ニューハンプシャー州にある給油所の地下タンクで爆発事象が起き、2名の負傷者が出る事故があった。事故があったのは、ニューハンプシャー州マンチェスター市のハノーバー通りにあるモービル給油所の地下タンクでフラッシュ・ファイヤーが起き、工事中の作業員2名が火傷の重傷を負った。
ハノーバー通りの風景 (右が事故のあったモービル給油所、左がCITGO給油所)
(写真はグーグルマップのストリートビュー から引用) 
■ 地下タンクは、ディーゼル燃料用で直径8フィート(2.4m×長さ24フィート(7.3m)、容量10,000ガロン(38KL)の大きさだった。タンクは地下に埋設され、出入り用に長さ6フィート(1.8m)のマンウェイが付いている。従って、タンクは深さ14フィート(4.2m)の地中に置かれていることになる。当日、タンクは空で、午後1時頃に何かの要因で爆発事象が起きたものである。消防署の職員のひとりは、「ガソリン火災のようなフラッシュ・ファイヤーだったようです」と語った。

■ ふたりの作業員がファイバーグラスで製作された空のタンク内に入って、ライニング補修を行っていたとき、爆発したという。通りの向かい側でCITGOの給油所を営んでいるジョン・ブリューワーさんによると、事故が起こったとき、マンホールから煙が上がるのが見えたという。大きな爆発音はなく、タンクのマンホールから勢いよく煙が出ていたという。
 被災者の救出にも携わったブリューワーさんは、「男性の一人がマンホールの下から登って来て、手を上げてごろりと仰向けになるのが見えました。駆け寄って見ると、その男性は腰から下がかなり火傷を負っていました」と語った。もうひとりの男性は下に取り残されていた。数人の人がその男性を助けようとした。ブリューワーさんは、「私たちはその男性が付けていた安全帯を引っ張ってマンホールから出しました。男性は頭から足先までひどい火傷でした」と語った。二人は救急医療用ヘリコプターでボストン病院へ搬送された。

■ マンチェスター消防署のジェームズ・バークッシュ署長は、「消防署では、タンク内に入り、発見した証拠について書類を作成しているところです。報告によると、タンク内には落下して壊れた産業用の照明灯が1個あったということです」と語った。強力な照明灯は、タンク内のライニング補修に使用する樹脂剤などのケミカル類のフラッシュ・ファイヤーの火源になった可能性がある。バークッシュ署長は、事故後に可燃性ガスが存在していなかったので、フラッシュ・ファイヤーの可能性が高いと語っている。

■ 被災者はサウス・カロライナ州出身で、ドナルド・スコットさん(24歳)とアンディ・スノーさん(31歳)の二人の男性である。二人は、ミズーリ州に本拠を置くタンク・テック社の従業員で、仲間5人で今回の工事現場に働きに来ていた。事故発生時、給油所は開店していたが、二人以外に負傷者は出なかった。

■ 調査官は、病院において入院したスノーさんとタンク・テック社の他の3名の事情聴取をした後、フラッシュ・ファイヤーの火源となったのは、産業用の照明灯だった可能性が高いと見ている。バークッシュ署長によると、「作業員のひとりは、照明灯が落下するのを目撃しており、その後火花が飛び、大きな炎が上がるのを見た」という。作業員らは炎を消火器2台で消火させたといっている。バークッシュ署長は、「間違いなく事故(アクシデント)の範ちゅうだった」と語っている。しかし、バークッシュ署長によると、調査官は慎重に照明灯について調べ、試験を行う予定だという。バークッシュ署長は、「問題は工事が安全な手順で、安全な方法で行われていたかどうかです。この点について調査しています」と語った。「この調査の結論が出るまで、現場の作業はすべて保留です」とバークッシュ署長は語った。 

■ バークッシュ署長によると、タンク・テック社が同州の別な場所で同じ工事を行なっていることを考慮して、調査官も結論を早く出すよう努めているという。実際、月曜日にハノーバー通りの給油所現場にやってきた作業員のひとりは、タンク・テック社の従業員として最近、セーラムの現場で働いてきたと言っている。タンク・テック社の広報担当は、会社では同州において多くの作業員を雇っているので、今日、誰がどの現場で作業しているかということを即答するのは実際のところ難しいと話している。

■ タンク・テック社広報担当のジョナサン・マクニーリー氏は、「信じられません。(セーラムの)現場での作業は完璧だったと思っています。現時点で言えることは、技能工たちが知っていることを明らかにすることです。私どもは、関係機関の方々に協力して、事故の原因を明らかにしたいと思っています」と語っている。さらに、「会社は1985年から操業していますが、今回のような事故は初めてです」とマクニーリー氏は語った。
                    上から見た発災現場    (写真は1.WHDH.comから引用) 
             被災者を搬送する消防隊と救急隊   (写真はFirehouse.com から引用)
      タンク・テック社の安全掲示板の見える発災現場   (写真はFirehouse.com から引用) 
       タンク・テック社の工事用資機材が並んだ発災現場   (写真はNECN.comから引用) 
       タンク・テック社の工事用車両が置かれた発災現場   (写真はNECN.comから引用) 
補 足                
■ 「ニューハンプシャー州」は米国北東部に位置し、人口は約132万人の州である。
 「マンチェスター」は、ニューハンプシャー州の南部にあり、州都であるとともに同州の最大都市である。人口は約11万人、都市圏人口は約17万人と、米国東部のニューイングランド北部3州の最大都市である。
(写真はグーグルマップから引用) 
  ■ 「フラッシュ・ファイヤー」(Flash Fire)は、可燃性ガス、可燃性または爆発性液体あるいは可燃性粉体と空気の混合気が着火して突然、激しい火災を起こすことをいう。高温、短時間、急速な火炎前面が特徴である。一般には「爆発」という用語で表現するが、消防など専門分野では区別しているので、今回は「フラッシュ・ファイヤー」という用語を使用した。

■ 「タンク・テック社」(Tank Tech, Inc.)は、1985年に設立されたタンク保全の専門会社である。タンク・テック社はミズーリ州を本拠として、カリフォルニア州、フロリダ州、サウス・カロライナ州、アリゾナ州に支店を置き、タンクの検査、コーティング補修、二重壁へのアップグレードなどの業務を米国国内で展開している。
(写真はTank Tech.Inc.のWebSightから引用)


所 感
■ 今回の事故については、消防署からよく情報公開されており、事故の状況や原因はほぼ推測できる。ライニング補修で使用する溶剤が気化して可燃性混合気を形成した中で、照明灯が落下して着火し、フラッシュ・ファイヤーを起こしたものと思われる。工事施工会社のタンク・テック社は地下タンクの検査や補修工事の専門会社で、実績もあり、今回も工事資機材を専用のトレーラーで搬送してきているので、基本的な工事の手順や方法に問題はないと思う。しかし、可燃性混合気を形成させているので、喚気状態が悪かったことは間違いない。人間は慣れてくると、手抜きや近道行為をしがちであり、何らかの基本的な事項を逸脱していたものと思われる。
2006年愛媛県の製油所で起こった火災事故現場
(写真は毎日新聞から引用) 
■ 照明灯が火源になったと見られ、実証のための試験が予定されているようだ。照明灯が火源で事故になったたらしいということを見て、思い出したのは、2006年1月17日、愛媛県菊間町の太陽石油四国事業所において開放工事中の10万KL原油タンクで火災が発生し、作業中の7名に死傷者が出るという事故である。事故直前に照明灯が倒れたという情報から火源は照明灯だといわれたが、照明灯のガラスは割れておらず、試験を行っても、再現できなかった。結局、着火源は特定できず、帯電による静電気のスパーク、照明灯や配線の漏電・ショートによる電気スパーク、鋼製工具・機材接触による火花のいずれかという結論だった。今回の事故では実証できるかどうかわからないが、着火したのは事実であり、なかなか再現しなくとも、事故は偶然の重なりで起こるものである。


後 記: 今回の事故情報では、当初「爆発」という言葉を標題に使っていましたが、耳慣れない言葉ですが、「フラッシュ・ファイヤー」としました。米国では、細かく区分しているようです。
 話は変わりますが、以前、この後記で周南市にある出光興産の旧アスファルト充填所のタンクが解体された話をしましたが、今回、この跡地を含めて開発面積約19,000㎡ に、広島市に本社をもつ総合スーパー「イズミ」が進出してくることが決まり、報道発表されました。周南市の駅前にあった山口県東部で唯一の百貨店の近鉄松下が閉店し、街の活性化が課題となっていました。この進出で出店するテナントや駐車場の大きさなどは未定ですが、約1,000人の雇用を生み出すそうです。時代は変わるという感じですね。
開発用地の全景、右が旧アスファルト充填所跡地 

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