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2025年7月18日金曜日

米国ルイジアナ州レイクチャールスの製油所でタンクに落雷し、火災

 今回は、2025710日(木)、米国ルイジアナ州レイクチャールスにあるシトゴ・ペトロリアム社のレイクチャールス製油所のタンク地区にある貯蔵タンクに落雷があり、火災が発生した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ルイジアナ州(Louisiana)レイクチャールス(Lake Charles)にあるシトゴ・ペトロリアム社(Citgo Petroleum Corp.)のレイクチャールス製油所である。製油所の精製能力は459,800バレル/日である。

■ 事故があったのは、製油所のタンク地区にある貯蔵タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025710日(木)午後1時過ぎ、製油所の貯蔵タンクに落雷があり、火災が発生した。

■ 住民のひとりは、「バスに乗っていてウトウトしていたとき、大きな雷鳴が聞こえ、乗客が叫び始めました。見上げると、巨大な火の玉が見えました」と語っている。別な住民は、「一度に2回雷が落ちました。煙も二筋上りましたが、小さい方はあっという間に消え、炎と煙はひとつなって立ち昇りました」と語っている。

■ 発災にともない、自衛消防隊が出動した。 

■ シトゴ・ペトロリアム社によると、規制当局にはすべて通知し、従業員全員の所在が確認したという。製油所の設備は火災タンク以外には被害はなく、通常通り稼働している。火災タンク内の油が燃えているが、現時点では敷地外への影響はないとみられる。

■ 州環境品質局が大気を監視しているが、現時点では粒子状物質は検出されていない。今のところ、周辺地域の住民への影響はなく、普段通りの生活を送っても構わないという。

■ シトゴ・ペトロリアム社も相互扶助組合員とともに、予防措置として被災地の監視と大気モニタリングを実施するという。

■ 事故にともなう負傷者はいなかった。

■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。 

 YoutubeTank fire extinguished at CITGO after lightning strike2025/07/13

 ●YoutubeTank fire extinguished at CITGO after lightning strike - 5 p.m. live2025/07/13

 上空からの映像は、https://www.newsbreak.com/  Lightning strike causes fire at CITGO refineryを参照。

被 害

■ 貯蔵タンク1基が火災で被災した。

■ 負傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 爆発・火災の原因は落雷とみられる。 

< 対 応 >

■ 消防隊は消火活動を行い、約3時間半にわたり消火活動にあたった。火災は午後5時前に消し止められた。

補 足

■「ルイジアナ州」(Louisiana)は、米国の南部にあり、テキサス州に隣接し、人口約465万人の州である。州都はバトンルージュで、最大の都市はニューオーリンズである。ルイジアナ州は石油と天然ガスの資源が豊富である。

「レイクチャールス」(Lake Charles)は、ルイジアナ州西部のカルカシュー郡(Calcasieu Parish)の中部に位置し、人口約84,800人の都市であり、郡庁所在地でもある。

■「シトゴ・ペトロリアム社(Citgo Petroleum Corp.)」は1910年に設立され、米国を拠点とする石油精製、輸送、販売を行うエネルギ企業である。1965年にブランド名を現在のCitgoへと変更したが、1986年にベネズエラ国営石油会社が株式50%の取得によって子会社化し、1990年に同社の完全子会社となった。レイクチャールス製油所の精製能力は459,800バレル/日である。

■「発災タンク」は貯蔵タンクと報じられているだけで、タンク仕様の詳細はわからない。グーグルマップで調べると、発災タンクは直径約20mの固定屋根式円筒タンクである。高さを1518mとすれば、容量は4,7105,650KLとなり、5,000KL相当のタンクとみられる。油種はわからない。

 落雷によって火災が発生したが、被災写真でみると全面火災の様相のように見える。落雷時にタンク屋根が噴き飛んだか、激しい火炎によってタンク屋根が落下したかは分からない。

■「消火活動」の詳細は分からない。直径20mのタンクの全面火災では、大容量泡放射砲システムは必要ない。通常、三点セット(放水能力3,000リットル/分の大型化学消防車1台)でよいとされている。

所 感 

■ タンク火災は落雷によるとみられる。タンク被災写真を見ると、タンク側板の上部が焼けて色が変わっており、タンク一杯に油が入っていたものと思われる。油種はわからないが、軽質油で爆発混合気がタンク上部に形成していたのだろう。タンクは固定屋根式円筒タンクであるが、火災写真では、全面火災の様相のように見える。落雷時にタンク屋根が噴き飛んだか、激しい火災によってタンク屋根が落下したものとみられる。

■ 直径約20mのタンクの全面火災であれば、大容量泡放射砲システムは必要なく、放水能力3,000リットル/分の大型化学消防車で消火できるといわれている。通常、消火活動は20分以内に制圧できなければ、難しいタンク火災だとみられる。今回、消火までに約3時間半かかっており、かなり難儀した消火活動だった。消火戦術が適当でなかったか、あるいはタンク屋根が液面に落下し、障害物あり全面火災だったものと思われる。実際のタンク火災にはいろいろな問題が発生し、簡単ではないという事例のひとつであろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Reuters.com, Lightning strike causes tank fire at Citgo‘s Lake Charles refinery on Thursday,  July  11, 2025

     Kplctv.com, Tank fire extinguished at CITGO after lightning strike,  July  11, 2025

     Joiff.com,  USA – Lightning Strike Sparks Tank Fire at CITGO’s Lake Charles Refinery,  July  14, 2025

     Knoe.com, Tank fire extinguished at CITGO after lightning strike,  July  11, 2025

     Ksla.com, Tank fire extinguished at CITGO after lightning strike,  July  11, 2025

     Dailydispatch.com, Tank fire extinguished at Louisiana CITGO after lightning strike,  July  11, 2025

     Americanpress.com, Citgo tank catches fire during lightning strike,  July  10, 2025

     Facebook.com, A tank is on fire at Citgo after a thunderstorm moved through the area,  July  11, 2025

     Theadvocate.com, Lake Charles refinery struck by lightning, causing a fire,  July  10, 2025


後 記: 今回の事例はいつも言っているように上空からの映像が効いています。事業者のシトゴ・ペトロリアム社は電子メールの声明で、「火災はすぐに消し止められ、負傷者はいなかった」と述べています。人によって「すぐに」のとらえ方が異なりますが、普通のひとは制圧までに3時間半かかるようなタンク火災の上空写真を見れば「すぐに」の印象は違うはずです。今回の事故の住民による目撃情報はソーシャルネットワーク(SNS)のフェースブックに掲載されたものから引用したものです。メディア情報の質が変化してくれば、このようなタンク事故の情報も変えていく必要がありそうです。

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