(写真はDenverpost.com
から引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国コロラド州(Colorado)ウェルド郡(Weld
County)ミード(Mead)の近くにあるアナダルコ・ペトロリアム社(Anadarko
Petroleum Corporation)の油井施設である。
■ 発災したのは、ミードのコロラド66号線とコロラド大通りの近くにある施設の原油タンクである。タンクは油井から生産された原油を集積するもので、パイプラインにつながっている。
ウェルド郡のコロラド66号線沿線付近 (矢印が発災場所)
(写真はGoogleMapから引用)
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< 事故の状況および影響 >
事故の発生
(写真は9news.com
から引用)
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■ 2017年5月25日(木)午後3時15分頃、油井施設の原油集積用タンクが爆発し、火災を起こした。火災によって発生した黒煙が立ち昇り、遠くからも見ることができた。
■ 事故は火の手が上がったあと、爆発が起ったという目撃の証言がある。爆発・火災が起ったのを見た住民が消防へ通報した。
■ 発災場所から約半マイル(800m)離れたところの住民は、「衝撃波を感じる同時に家が揺れました」と語っている。現場から165ヤード(150m)しか離れていないところに住む人は、「ボン、ボンと音がし、家の屋根が落ちてくるのではないかと思いました」といい、「我が家は10年ほど前に建てましたが、その後、約5年前にタンクが設置されました」と語った。
■ 発災に伴い、マウンテン・ビュー消防署や保安官が出動し、現場に到着したとき、油井施設のタンクは完全に炎に包まれていた。
■ 爆発があった時、施設では作業員によるメンテナンスが行われており、事故に伴いひとりが死亡し、3人が負傷した。負傷した作業員のうち2人は火傷治療のためグリーリーにある北コロラド医療センターに搬送され、もう1人はラブランドにあるロッキーズ医療センターに搬送された。作業していたのはアナダルコ・ペトロリアム社の従業員でなく、メンテナンスを請負った会社の作業員だった。
■ 事故発生に伴う近くの住民への避難指示は出されなかった。消防署は近くの住民に対して危険性がない旨、戸別に伝えた。
■ アナダルコ・ペトロリアム社は、5月26日(金)、「作業員は施設のアップグレードに関する工事を行っており、ほぼ終了していました。事故時、施設の運転は行っていませんでした」と語った。
■ 事故のあった施設の所有者であるアナダルコ・ペトロリアム社は、今年4月17日、ファイヤーストーンの町で死者を出した住宅の爆発事故に関係している会社である。爆発事故は天然ガス配管の漏れによるもので、ファイヤーストーンの現場は今回の発災場所から南へ約4マイル(6.4km)行ったところにある。
被 害
■ 4名の死傷者が出ており、うち1名が亡くなった。死亡したのは、ウェルド郡庁のグリーリーに住む32歳の男性で、爆発によって亡くなったという。
■ 油井施設の複数の原油タンクが焼損し、内部の原油が焼失した。
(写真は9news.com
から引用)
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(写真は9news.com
から引用)
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(写真はDenverpost.com
から引用)
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< 事故の原因 >
■ 労働死亡災害に至った事故の原因は調査中である。
< 対 応 >
■ マウンテン・ビュー消防署は、4月25日(木)午後3時18分に爆発があったという通報を受け、ただちに現場へ出動した。消防隊のほか、ウェルド郡保安官およびウェルド郡検視官が同時に出動した。
■ マウンテン・ビュー消防署は、4月26日(金)、タンク火災が鎮火したことを示す写真を公表した。
マウンテン・ビュー消防署から公表された写真
(写真はMvfpd.org から引用)
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補 足
■ 「コロラド州」(Colorado)は、米国西部に位置し、人口約503万人の州である。
「ウェルド郡」(Weld
County)は、コロラド州の北部に位置し、人口約25万人の郡である。
「ミード」(Mead)は、ウェルド郡の南西部に位置し、人口約3,400人の町である。
米国の各州の位置
(図はGepcities.j
pから引用)
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■ 「アナダルコ・ペトロリアム社」(Anadarko
Petroleum Corporation)は1959年に設立され、テキサス州ウッドランドに本拠地を置く石油会社で、主に原油および天然ガスの探査・生産を行っている。2016年には、原油換算で1日当たり792,000バレルの原油を生産している。
アナダルコ・ペトロリアム社の本社ビル
(写真はFuelfix.com
から引用)
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ウェルド郡ミード近くにある発災したとみられる油井施設(事故前)
(写真はGoogleMapから引用)
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今回の事故のあった場所から南へ約6.4km行ったところにあるファイヤーストーンの町で、今年4月17日、住宅が天然ガスによる爆発で火災になった事故があり、2名の死者を出している。この原因は使用されていないアナダルコ・ペトロリアム社保有の埋設配管(呼び径1インチ)が関与し、このほかに3,000本の配管が残っているいうことで、大きな問題になっている。(油井と埋設配管の例は図を参照)
ファイヤーストーンの住宅爆発火災事故
(写真はDenverpost.com
から引用)
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アナダルコ・ペトロリアム社の油井と埋設配管の例
(写真はFuelfix.com
から引用)
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所 感
■ 爆発時の状況が分からないが、2010年2月に米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた安全資料「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」が活かされていない事例であることは間違いないだろう。
原油価格が下がったことによって、一時低迷していた米国におけるシェールオイルの開発が盛り返しているという。シェールオイルの生産は原油価格が60~70ドル/バーレルでないと利益が出ないといわれていたが、最近、掘る場所の厳選判断や掘削方法の改善によって40ドル/バーレル以下でも採算が合うようになったという。(2017年5月26日朝日新聞「盛り返す米シェールオイル」)
最近、米国における油井施設関連の原油タンク事故は減っている印象を持っているが、経済(経営)好調の裏に今回のような死傷者の出る事故が増えることのないことを望みたい。
■ マウンテン・ビュー消防署は情報公開に積極的で、ウェブサイトに出動状況を写真付きで発表している。ただし、消火活動に関する情報はあまり出ていない。消防隊が到着したときには、タンク群が炎に包まれていたという。油井施設まわりに隣接した設備や建物がなく、爆発を起こすような軽質ガス(または天然ガス)が存在し、消火水源に制限がある状況を考えれば、積極的消火戦略をとるのではなく、初期活動で燃え尽きさせる戦術をとるのは妥当な判断といえよう。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Denverpost.com, Anadarko Oil Tank Fire in Mead Injured Three
Workers, Spews Black Smoke, May 25, 2017
・Denverpost.com,
One Dead, Three Injured in Anadarko Oil Tank Explosion in Weld
County, May 25 (Up-date),
2017
・9news.com, One Killed, Three Injured in Oil Tank Fire
near Mead, May 25,
2017
・Kdvr.com, One
Killed, 3 Injured in Anadarko Oil Tank Explosion in Weld County, May
25, 2017
・Reuters.com, Colorado Oil Tank Fire Kills One, Injures
Three, May 26,
2017
・Fuelfix.com, Fire at Anadarko oil tank site kills worker,
injures Three, May 26, 2017
・Usnews.com, Worker
Killed, 3 Hurt in Colorado Oil Tank Fire,
May 25, 2017
・Denver.cbslocal, Residents Shaken By Oil
Tank Explosion, May 26,
2017
・Upstreamonline.com, One dead in Anadarko tank battery
fire, May 26,
2017
・Coloradoan.com, Victim in Mead oil tank fire identified
as Greeley man, May 27,
2017
・Mvfpd.org, News Release: Mead Oil Tank Fire, May
26, 2017
後 記: 今回のメディアの事故情報では、当該タンク火災のほかに4月に起った住宅爆発の事故が必ず付随して記事にされていました。メンテナンス中だったタンク爆発・火災事故は事前の対策が可能だったのに対して、突然、住宅が爆発火災の被害を受け、なおも危険性が潜在するのではないかという不安感から住民の関心の高いことが伺い知れます。
ところで、今日は地元で話題になっていることを紹介します。周南市に近い光市の虹ケ浜海岸にゴジラが現れたというローカルニュースです。実は、これは海岸に打ち上げられた流木や木切れを使って地元の方が制作したものです。海岸の美化の啓蒙のために作ったそうです。実物を見に行ってきましたが、よくできています。しかし、残念ながら5月末で解体されるそうです。海岸保全の法令からすると、危険な構築物ということで県から指示が出たとのことです。(惜しむ声が多数ということですが)